Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ケインは再び、三人の男に目を向けた。

 着ている服がびちょ濡れで、身なりが崩れているように見えるが、生地を見るとそれほど傷んでいない。

 逃亡中なのに、身なりが整えられているのは、大分前からダグラスの世話になっているのだろう。数日前に知り合ったわけではなさそうだ。

 ロバート以外の男二人には見覚えがない。初対面だった。一人は大柄で肌は陽に焼けて、濃い色をしていた。

 もう一人は小柄で身体が細いが、動きは俊敏そうだった。

 最後にロバートと目が合った。顔見知り程度で、挨拶以外の言葉を交わした記憶はない。

「見ての通り、私はもう老いぼれです。早く王妃陛下とのお約束を果たしたいのです」

 ダグラスの言葉に、ケインは三人から目を離した。

(やはり野心のある男だ。陛下の幸せを考えて行動しようとはしていない)

 ケインは腹が立ったが、同時にロバートたちを利用できるかもしれないと思っていた。

 ジョーンはジェイムズの死を望んでいる。日々増加していくジェイムズの嫉妬から逃げたいのだ。

 ケインが殺すより、無理な政治を押し進めた結果で暗殺されたという筋書きがいいかもしれない。いや、そういう筋書きにするべきだ。

(僕は手助けをするだけ。主になって動くのは、ダグラスとロバートたち)

 ケインはダグラスに笑顔を見せた。

「できる限りの協力はしましょう」

 ダグラスが満足そうに頷いた。ロバートたち三人も頭を下げた。
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