Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
(王妃陛下以外の女性に興味がないだけだ)

「苦手なのでしょうね。好きだったら、結婚をしていたでしょう」

 ケインは笑顔を作った。ジュリアにスコッチを持って来るように言い、キーラには何か体の温まる食事を持って来るように言った。

 二人はドレスの裾を持ち上げて、一階に下りて行った。

「僕が話したい内容、理解していますか?」

 ケインはロバートとダグラスの顔を見た。二人は同時に頷く。

 ケインが来てもダグラスは女と戯れていた。胸を触ったり、太ももを触ったり、女も嫌がりながらも、嬉しそうに笑い声をあげていた。

「今からキリキリしていたら、身が持ちませんよ」

 ダグラスの余裕のある笑みが、ケインには腹立たしかった。

 ケインはロバートたちに目を向けた。ロバート、リーゼル、アルバートが別々の場所にいながら、三人同時にエールを飲んでいた。

 その姿が面白く、苛々した気持が吹き飛ばされた。

(ダグラスの言う通り、焦ってはいけない。余裕ある態度が必要だ)

 前に置いてあるエールを眺めてから、視線を上げて暖炉の炎を見た。気持ちのスイッチを入れ換えると、力の入りすぎている身体に気づけた。
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