Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「他の男二人の身体的特徴を話しておきます。大柄な男がアルバート・ティグルで、小柄で細身な男がリーゼル・クルビスです。暗殺時は、ロバートとリーゼルが国王陛下の殺害を。アルバートがドアで、国王陛下の護衛に来た者たちを殺します。三人とも王妃陛下の命を奪わぬよう、きつく言ってありますので、ご安心ください」

 ジョーンは二十一日の夜を想像した。

「僕とダグラスは、少し間をあけてから部屋に入ります。ロバートたちが暗殺に成功し、逃げる間を与えるためです。近くで待機しているので、もしもの場合は、すぐに王妃陛下をお守りに行きますので」

(絶対に成功するわ。いえ、成功させるのよ)

 厳しい監視も終わり、息苦しい生活にもピリオドが打たれる。自由に恋愛ができるのだ。他人目を気にせずケインと一緒に時を過ごせる。

 想像しただけで、ジョーンの心は幸福で満たされた。

「他のメイドたちが戻ってくる前に、そろそろ行くわね」

 ジョーンはケインの手から離れるのが辛かった。もっと一緒に居たい。もっと触れていたい。

(しばらくの我慢よ)

 ジョーンはケインにキスをしてから、木々の中に入っていった。
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