Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ジョーンはキャサリンの声に驚きつつも、心の隅で喜びを感じた。

 自由になれる。ジェイムズから解放されると考えるだけで、踊り出しそうだった。

 ジョーンの中で気持ちよくなっていたジェイムズが、動きを止めるなり、がばっと身体を起こした。部屋の入口に目をやる。

 キャサリンの声で、ジェイムズが驚いたのが、ジョーンにもわかった。

 ジョーンの上にいたジェイムズの胸から心臓の音が聞こえていたからだ。一気に、早いリズムで心臓が鳴り出していた。

「余の楽しみを邪魔するのは、誰だ」

 ジェイムズが不機嫌な声を発した。

 ジョーンも上半身を起こした。腰の位置をずらして、ジェイムズのペニスを体内から押し出した。

 扉が勢いよく開くと、ドアの枠内に三人の男が姿を現した。

 先頭にロバート・グレイアムが立ち、三角形になる立ち位置で、後方に大柄な男のアルバートと小柄な男のリーゼルが立っていた。

 三人の男たちは抜刀し、鎖帷子を服の上から着ていた。

 服を真っ赤に染めたキャサリンが、助けを請おうとしたのか、侵入を阻止しようとしたのか、ロバートの両膝にしがみ付いた。
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