Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「おお。我が息子よ。私と一緒に来るといい」

 ジョーンはウイリアムの後ろから室内に目を凝らした。暖炉の炎で、少し室内の動きが窺えた。

 騎兵二人が、荷物の上で倒れている。生きているのか、死んでいるのかよくわからない。

 立っている騎兵が窓に向けて剣を構えているのを見えると、ダグラスは窓の近くに立っているのだろう。

 ジョーンはケインの姿を探した。ヘレンを守るかのように前に立って、剣先をダグラスに向けていた。

「事情は、王妃陛下から伺いました。父上、僕は貴方を許せません。王妃陛下に剣を向けるとは、ダグラス家の恥です」

 ウイリアムが暖炉の前で剣を抜くと、父であるダグラスに鋭い刃を向けた。

 直後、男たちの情けない声が聞こえてきた。ケインも剣をしまうと、窓へと歩いていった。

「ダグラスが逃げました! 追いかけます」

「待て。同じ手順で行ったところで、捕まらない。馬で追いかけよう」

 ケインの大きな声がした。騎兵が返事をすると、廊下に出て来た。騎兵二人が廊下に出ると、ジョーンにお辞儀をしてから廊下を走り去っていった。

 ケインも廊下に出てくるなり、ジョーンに微笑んだ。
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