Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 友人と呼べる人など、ジョーンには誰一人として存在しないのだ。

 ジョーンはケインから顔を背けた。涙が頬を伝った。

「陛下の弟君、エドマンド様に手紙を書きましょう。きっと来てくれますよ。私の妹、マーガレットも、スコットランドに来ると手紙がありました。スコットランドに来たら、ぜひ紹介させてください」

 ケインがジョーンの肩を抱きしめた。

「ケインに、マーガレットっていう妹がいたの?」

「父の後妻の子です。私がスコットランドに来てから生まれた妹なので、まだ一度も会っていないんです。弟夫婦が遊びにくる予定になっているので、一緒に同行するようです」

(またしても、聞いていない話だわ)

 ジョーンの胸が苦しくなった。

「申し訳ありません。陛下はご家族と会いたくても、なかなか会えないご身分でしたので、私の家族の話はお心を痛めるだけだと思いまして」

 ケインが目を伏せて謝った。ジョーンは笑顔を見せると、首を横に振った。

「これからは何でも話して。ケインの話なら、何でも聞きたいの」

 ケインが頷いた。ジョーンの腰に手を回すと、ケインがキスをしてきた。ジョーンはガウンを脱ぐと、ベッドの上に倒れた。
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