Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 レティアの魔性の魅力に、ケインが虜にならなければいい。可愛らしい笑顔に騙されなければいい。

 ジョーンは夕食前に見たレティアの姿を思い出した。大きな胸に、細いウエストが印象的だった。

 ジョーンの身体はスレンダーで、さわり心地の良い肌ではあるが、胸は小さい。

 コルセットで背中まわりの肉を寄せ集めて、大きく見せる努力はしているが、それでもやっと膨らみがわかる程度だ。

 レティアのような豊満な胸をジョーンはつくれない。ジョーンの胸は小振り割には良い形をしている。世の男性はどちらが好きなのか。ジョーンにはわからない。

 膨らみが大きくて、掌に収まりきれない豊満な胸か。背中の肉をかき集めて、やっとできる谷間か。ケインはどちらに魅力を感じるのか。身体を熱くしてくれるのか。

「レティアに負けたくないわね。ジェイムズの身も心も奪って、後継者までレティアの子にされたら、私が嫁いできた意味がなくなるわ」

 視界が白くぼやけて見えた。

 顔が拭き終わり、髪が整え終わると、ジョーンはエレノアに支えられるように立った。

 暖炉の前にあるソファにジョーンは腰を下ろした。

「レティアの話を聞いたら、教えて頂戴ね。今日はもう下がっていいわ」

 エレノアとローラが小さく頷くと、ジョーンにお辞儀をした。ローラが水の入っている桶を持ち、エレノアがドアの近くに置いてある籠を持った。

 ドアの前で振り返ると、挨拶と一緒に頭を下げると部屋を出て行った。
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