Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ジョーンの情報獲得のためか。王妃の座から失脚させるために、ケインを利用するつもりだったのか。

 一人の女として、ケインに魅力を感じただけか。

 理由はわからないが、ケインを奪おうとするなんて許せない。腹だたしい女だ。

 赤い布団の上に倒れると、唇を噛んだ。

(やっぱり、レティアには負けたくないわ)

「ジョーン、僕はここにいます。不安にならないでください」

 ケインがベッドに腰を掛けると、ジョーンの肩に手を触れた。

 ゆっくりと指を動かして、ジョーンの身体を撫でていった。ケインに触れられた箇所が、熱を持つ。

 もっともっと触って欲しいと、ジョーンの心がケインの指を求めた。

 ジョーンは寝転がると、ケインの唇を指でなぞった。

「ケイン、脱がせて。私を抱いて」

 ジョーンの言葉に、ケインがにっこりと笑って頷いた。嬉しそうに微笑むケインの瞳が好き。身体の芯から、ケインが欲しくなる。

 ガウンの襟に手を掛けると、ケインがガウンを脱がした。ジョーンの白く細い肩に、口付けをした。
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