Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
―ジョーンSIDE―

 一四二九年三月五日。

 ローラが早朝から城門近くで、従者を待っていた。昨日、ローラの友人から、レティアに陣痛がきていると手紙が届いていた。

 産まれたという文が届くのを、じっと待っていられなくなったローラから、申し出があったのだ。

 メイドの仕事を他の者に頼んで、ローラが走って出かけて行くのを、窓からジョーンは確認した。

 午前十時。ジョーンはケインと散歩に行こうと、馬小屋から愛馬ガーネが出てくるのを玄関ホールで待っていた。白い木の椅子に座り、右横にエレノアが立っていた。

 ケインが馬小屋に馬を取りに行っていた。

 玄関ホールのドアが開くと、ローラが額から汗を流しながら入ってきた。左手には文を握っていた。

(レティアの子が無事に産まれたのね)

 レティアの子は十中八九、ジェイムズの子だろう。

「性別はどっちだったの?」

 ジョーンは顔を横に向けて、ローラの顔を確認した。ローラが呼吸を整えようと、胸に手を押さえている。ジョーンの前に立つと、スカートを持ってお辞儀をした。

「産まれた子は男の子でした」

 ジョーンはローラに短い返事をすると、エレノアに視線を向けて、手を出した。エレノアが手に持っていた小袋をジョーンに渡した。

 袋の中から、銀貨を三枚出すと、ローラの手の平に落とした。

「もしかして、レティア様の子は」

 エレノアが恐る恐るローラに小声で聞いていた。もちろん、ジョーンの耳にも入っている。
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