アシタのナミダ
黒だけの世界Ⅲ
頬に張り付く金色の髪が、空から舞い降りる水滴を唇に垂らす。





白いシャツもグリーンチェックのスカートも、濡れて私の身体に張り付く。





ローファーが水飛沫を上げる度に意識がどこかへ連れていかれそうになる。





真夏だというのに、私の肌をなでる風は冷たい。





「―――ジュリ」





聞こえる。





「アナタに言いたい事があるの」





私を呼ぶ声が、聞こえる。





「―――ジュリ」





宙に彷徨う言葉達を両手一杯に集めて、辿り着いた街灯の白い光の中で、私は彼女に出逢う。





「きっとアタシは、アナタに出逢うために産まれてきた」





穢れのない白さを持つ、穢れた身体。





アスファルトに横たわる彼女から、溢れる赤黒い液体が流れている。





「―――ジュリ」





赤く濡れた唇が、囁いた。




< 13 / 50 >

この作品をシェア

pagetop