アシタのナミダ

「カレン？」





もう、私の声も届かない。





「お願い。ジュリ」





たすけられない。





「カレン？」





そんな遠い遠い場所へ向かって、





「アタシを忘れないで」




カレンは飛び立った。





「待って！　カレン！」





翼なんてない。





こんな薄汚れた世界では、翼があっても腐ってしまう。





私はどしゃぶりの雨を走った。





思い付く場所の全てを回り途方に暮れながら、一度だけ会ったホストのマンションを思い出した。





どうやって行ったのかも憶えていない。





きっと物凄く必死な形相だったんだろう。





巻き髪は解けて肌に張り付き、込み上げる感情でぐしゃぐしゃの顔。





そんな私の視界に見えた白い光。





冷たい雨と光が注ぐアスファルトの上で、





「カレン？」





赤黒い血に塗れた彼女が眠っていた。





顔は左半分が潰れ、淡いピンクのシャツから伸びた細くしなやかな指の右手は穢れていたが、とても綺麗だった。





「カレン？」





握る手は凍えていた。





けれどその表情は、優しかった。





「嫌ァァァァァァァァァァァァァァァッ！」