アシタのナミダ
ゴムの焼けたような嫌な臭いが、鼻に付く。





意識がない間に全身を、鋼の機械に交換されたようだった。





けれど鋼の身体に繋がる神経は、生身の白い糸。





動かそうにも重くて命令すら受け付けない。





「………トキオ」





何とか絞り出した声も、雨やエンジンの音に掻き消される。





眼が開けられない。





いや、開いている? 





視界が赤くてよくわからない……。





「―――大丈夫ですか!?」





そう言って誰かが窓ガラスを割り、シートベルトを切り始めた。





「体に痛いところは?」





朦朧としていて応えられない。





返事も待たずにエアバックを押し退け、慎重に私の身体を引きずり出す。





「………トキオ………」





「何だって?」





力の限り伸ばした鋼の右腕では、血に濡れた顔の彼に触れられない。





「トキオを……たすけて―――」





暗闇が再び、私の意識を呑み込んだ。




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