アシタのナミダ
かすかなその温度
暗闇の中で再び眼醒める。





青白いカーテンが空間の全てを埋め尽くしていた。





ああ、私は生きている。





生かされている。





意味は? 





理由は?





言葉の羅列が焦点を持たない無意識から溢れ出していた。





「……トキオ」





不吉な夢を振り払うように、私はまだ痛みの残る全身から両足をリノリウムの床に下ろす。





素足から伝わるひんやりとした温度が、私の生存を証明していた。





だが、彼の生存を証明するモノは、何一つない。





母の言葉も、偽りかもしれない。





この眼で、この手で、トキオを感じるまでこの不安は拭えない。





トキオに会わなければいけない。





今、すぐに。





立とうとベッドから離れると、足に全く力が入らずそのまま崩れ落ちた。





立ってよ。





こんなトコで寝てる場合じゃないんだから。





私は早くトキオに会いたいんだから。





壁を支えにして何とか立ち上がる。





どうして力が出ないの?





心と体が離れていくのを感じながら、無意識が全てに侵食するのを抑えていた。





足音が聞こえる―――





死神が迎えに来たのだろうか。





一定のリズムを刻むその主は、私の病室の前で立ち止まり、扉を開けた。





踊るように柔らかな光がベッドから私に飛び移る。





「何してるの!?」





そう言って抱きすくめる白衣は病院独特の匂いではなく、母に似た優しい匂いがした。





「……誰?」





「アナタの主治医の栄川(エイカワ)よ。心配で見に来た」





ベッドへ戻そうとするのを私は僅かに残っている力で拒む。





「トキオに会わせて」





女医は小さくため息を吐き、





「そう言うと思った」





と微笑み、病室に置かれていた車イスに私を乗せる。





「彼は今、ICUにいるから」





彼女はそう言って私の背中を押す。







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