空色の瞳にキスを。
殺されると青い顔をした子供をせせら笑って、ライは鼻で笑って続けた。


「まぁ、そんな冗談は置いておいて。

本当の目的はあなたの左耳にあるルイの石と、王のあなたの力ですよ。」

その言葉に、ナナセは反射のようにカイの方を見つめる。
バチンと、カイと視線が絡む。

『言うな』と、言葉に出していないけれど、そう言っていた。

ナナセはカイの目を見て頷く。

わかったと、青色の瞳でナナセはカイに返した。

カイはなにもなかったように続ける。

「力が欲しくて、力を得るその為だけに、俺に毒まで盛ってか?」
──え?

「そうですよ。
それがどうしました?

どうせ、俺に殺されなかったならば他の奴等がお前を殺していたでしょう?」

たまたま、俺だっただけですよ、そんな風に言うライにナナセは混乱した。

──あたしは今までいったい何を見てきたのだろう。

──どうしてとうさんと、大好きだった人の裏切りを見ないといけないの。

頭がぐらぐらして、今まで立っていた大好きな場所が全部崩壊していくような、そんな気がした。

「ナナセ。」
「な、なに……?」

今なら分かる。
カイは毒を盛られたせいで体が上手く動かないのだ。

より息苦しそうに、より蒼白くなる様子に、ナナセが耐えきれなかった。

「あたし、助けを呼んでくる!」

「だめだ。ナ、ナセ。
行くな。ここに、いな、さい。」

カイが咳き込む。

息と一緒に出てきた赤黒い、液体。

ひゅぅっ、自分の息を吸い込む音が遠くで聞こえた。
吐かれた血にナナセはまたカイを見上げた。

「とうさっ……!」

「大丈夫、とは言えないけど。ナナセを逃がすまで死ねない。」 
伸ばした手をそっと掴まれて、言われればもう、理解が追い付かない。

「なんであたしだけ、とうさんも……!」

「ナナセ、一人で逃げられるな?
一人で、暮らせるよな?」

「とうさ……」

それはきっと、母も父も、失ってしまうことだと、意味していると、小さいながらに理解した。

やだ、と言葉を発する前に手を離され、自分の体が浮き上がった。

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