空色の瞳にキスを。
■2.黒髪の少女

1.魔法医術師の秘密

──あれから8年が経つ。


王女が城から逃げ出した3日後、カイ・ルイ国王の死が報じられた。

そしていつの間にか、遠い血縁を名乗る者が次の王座に就いていた。


穏やかだった国は、軍事に特化した戦力保持国に変わった。
魔術ミサイルや艦船、更には人間兵器まで改良を重ねられ作られた。

その代償に、綺麗な煉瓦造りの建物や、心を包み込むような草原が開発で消えた。


国はどんどんと強くなり、温かさが消えていった。

王女は、9歳で賞金首になった。


母のような闇のルートの賞金首ではなかった。

ひとつ、罪がついた公の賞金首だった。


──『父親殺し』の王女様。


そんな彼女はまだ捕まっておらず、逃亡する彼女に民たちは怯えながら王の下で生活を送っている。


   ***



ここはルイの都とは程遠い小さな小さな町。
少し前まではレンガ造りの家と木造の家が入りくんだ不思議な町だった。

今は、黒く冷たい魔術で造られた高い、天まで届きそうな硬いビルが並ぶ。
黒く塗りつぶされた空に伸びる魔術で造られたビルに、魔法のランプが淡く窓ガラスを彩る。
今は軍の機器などを生産する職人街である。


そんな中を沢山の人たちが歩いていく。
魔力の溢れる世界と言えど全員が使えるわけではないし、また個人差も激しい。
地上を歩いているのはほとんどが魔法の使えない者か魔力の弱い者だ。

有能な魔術師たちは空を舞う。
瞬間移動は魔力ではできないので、迅く移動するために魔力を使う。

この時代でも、魔力の高い者は尊敬された。

科学はこの世界にはほとんど発展しなかったため、魔術でしか人を助けたり出来ないからだ。

魔術にも限界はあるが、万能の技術。

特に先代カイ王や先々代のルイ王の治世のお陰で、魔術は他国よりも進歩していた。


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