空色の瞳にキスを。
じゃあまた、と手を振り廊下でリクと別れ、いつも三人で使っていた部屋へ入る。


「懐かしいでしょ?」

扉を開けてスズランがファイへ笑顔を向ける。


「…うん。」

キラキラとした黒い瞳があたりを見渡す。

鍵が閉まったことを確認すると、ファイがナナセへと戻る。

黒い瞳が空色へと戻る。


「ふーっ…。」


銀が4人の目の前でふわりと舞う。


「疲れた?」

スズランの問いにちょっとだけ笑みを返した。

「あ、うん。」


ナナセは魔力こそ底知れないが、それを扱う力はまだまだ拙い。

そこらの魔術師よりは勝るものの、上には上がいる。


気力もまだまだ未熟で、同時にたくさんの魔術を使うと精神の消耗が激しいのだ。

それに今夜は殺魔の力を受けたのだ。

苦しいのは否めない。

「あたし、まだまだだなぁ…。」

銀の少女は淡く笑い、瞳を閉じる。


もう一度開かれたときには、優しい表情の中にも強い意志が宿っていた。


「ねぇ、スズラン。

あたしがここに帰ってきたのは、約束をしていたからって言うのもあるけれど…」

少女の声を遮って、獅子が続ける。


「分かっているわ。

この子達の訓練、でしょう?」

金に近い瞳は優しくナナセを見下ろす。

ナナセの後ろにいたリョウオウの二人が身を固くした。


「…え、分かっていたの?」


戸惑うような彼女の声にスズランは微笑んで答える。


「なんとなく…ね。」

スズランの強い眼差しが二人に向けられる。

「アズキさんは魔力に飲み込まれそうな体をしている。


トーヤさんは扉が開ききっていない。

そんな体で目の前に現れて貰ったら、嫌でも気にかけちゃうわよ。」

ナナセが思っていたことを的確にスズランは言い当てる。

だが、魔術師になりたての卵の二人には分かる訳もなく、また魔術を使えない黒猫にも分かるはずはない。


だから現実と受け止められない本人たち。

けれどナナセが反論せずに唇を引き結んでいる様子から、どうやら本当のことらしいとアズキは悟る。


「…ねぇ、その飲み込まれる、って何?」

おずおずと先見の少女が尋ねる。

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