Hurly-Burly 4【完】
それは、存在的な意味での話だ。
彼が空気のように軽いというわけではない。
ただ、掴みどころがないような人でもあったが、
日常生活では当たり前過ぎてあまり気付かないような
だけどそれがないと呼吸することも出来なくなる空気
と同じで彼が居ないことは考えられなかったはずだ。
いつもあたしの傍に居てくれた優しい人だった。
それが当たり前だと甘えてしまっていたんだ。
居なくなって初めて必要性に気付いたとは
よく聞く話だが自分が経験することになるとは
思っても見なかった。
「そうか、若い内はいろんな経験をするといい。
それが必ずしもいい結果を生むわけでもないが、
経験が感情に繋がると言ってね、君は感情が
乏しいと言うが、知らないことを恥じることはない。
知っていけばいい、経験をしていく内に自然と
いろんな感情を知ることになる。」
「ダンディーさんも経験からいろんな感情を知ったのですか?」
口元を緩めて微笑むダンディーさんはやはりどうしても
ダンディーさんが言うような良い人の真逆とは思えない。
「そうだ、だから、怖がることも恥じることもしなくていい。
誰も最初から全てを持って生まれて来たわけじゃない。
数字が0から始まるように増えていくものだ。」
「とっても、哲学っぽいですね。」
「経験しているおじさんが言うんだから
間違いではないよ。」
「はい、とてもためになるお話です。」
ふんっと鼻息を噴出するとダンディーさんが笑った。
「やっぱり、日和ちゃんは可愛いな。」
「は、はい!?」
また、ダンディーさんご冗談を・・・。
て、照れてしまうからやめてけれ!
「その真っ直ぐさが君のいいところなのかもしれないね。」
「えっ?」
「話、戻してもいいかな?」
「あ、はい。もちろんですとも!!」
ダンディーさんは瞳を閉じて思い出すように話しだした。
「2回目に彼女に会った時、彼女美人だから
俺の知り合いに絡まれててね。」
「美しい人はナンパというものをされるそうですね。」
あたしの場合は、勧誘されることはある。