Hurly-Burly 4【完】
頭がキレて仕事が出来るなら尚の事だ。
ナオでもなく、お兄ちゃんでもなく、兄ちゃんでもなく
一番何も知らずに脅しが聞くようなあたしに
ターゲットを絞った時点で気付くべきだった。
「貴方は一ノ瀬の何が狙いなの?」
『私の狙いはただ一つですよ。貴女の泣き顔が見たい。』
あたしの泣き顔を見たいだと?
「どういうこと?」
『そのまんまの意味ですよ。私はお嬢様が苦しみ
不幸になることを望んでます。他には何も望んでない。』
「ど、どうしてあたし?」
あたしの不幸が望みならどうしてじいちゃんを
騙すようなことしたんだ。
『お嬢様が憎くてしょうがないから。』
「えっ?」
『貴女がのうのうと何も知らずに生きていることに
苛立ちを覚えた。幸せになんてさせませんよ。』
その憎悪がどこから来たものなのか分からず、
言葉を詰まらせて居るとクスリと笑う声が電話口
から漏れて不快だった。
『貴女が少しでも幸せになろうものなら壊して
行くだけのこと。それが私の目的だと言えば
納得してもらえそうですか?』
恐怖にさえ感じた。あたしだって、人間だ。
怖いという感情だけはきっちり機能してるらしい。
『ところで、用件を伝え損ねていましたね。
3月22日の貴女の16回目の誕生日にパーティー
を開き、正式に後継となることを発表させて頂きます。
お忘れなきようお願いします。では、メリークリスマス。
良いお年を迎えられますよう心からお祈り申し上げます。』
心にもないことを口に出来るなんて大した男だ。
絶対に、性格の悪い男に違いないな。
もう、あたしには時間がないのか。
それから、彼の目的があたしだと理解出来たのは
大きな収穫だったかもしれない。
これなら、誰も傷つけることはない。
決して、守ってみせるわ。
だけど、知りたくなんかなかったよ。
人に恨まれるってこんなにも痛いものだったんだ。