幕末桜
「…歳。」

いつも通りの落ち着いた声。

だけど今はどこか切なくて。

きっと分かってるんだ。

此処に集まった全員が。

だけどどこか切ないのは、芹沢がこれまで共に歩んできた仲間であることに変わりはないから。

芹沢が今どんなに変わり果てた怪物だったとしても。

だけど皆は武士だから。

新撰組隊士だから。

見逃すわけには行かない。

斬らなくちゃいけないんだ。

「……近藤さん。てめぇら良く聞け……。

……正式に芹沢一派を討つ。」

ドクン、心臓が奇妙な音をたててなった。

分かってた。

分かっていたけれど。

胸が、ゆうことをきかない。

「蝶にはもう少し潜入調査を続けてもらう。確かな証拠が現れ次第、芹沢一派を討つ。

各自、稽古に励むように。いいな?」

「「「「「承知。」」」」」

「…部屋に戻れ。明日は早いぞ」

そう土方さんが言うと皆はぞろぞろと部屋を出た。

…それぞれどうにもならない思いを抱きながら。

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