幕末桜
「失礼いたします。本日よりこの八木低で女中を勤めさせていただきます、里と申します。

どうぞ、よろしくお願いいたします」

私はそう言うと軽く微笑んで頭を下げた。

「…ほぅ…。我は新撰組局長、芹沢鴨じゃ。

…それにしても里よ…、そなた随分と美しき女子じゃのぅ…」


(やっぱり、この人が芹沢ね)

「芹沢様…美しいなどと…。止めて下さい。そんなご冗談…」

「冗談ではない。のぅ、新見」

「はい、誠に…」

新見はニヤリと笑って言った。

「里、明日から働いてもらう。今日はもう休むがよい」

「はい、では失礼いたします」

「うむ」

芹沢の部屋を出て、私は一旦部屋に戻った。

すると芹沢の部屋から新見が出ていく音がした。

(この部屋から芹沢の部屋の様子が分かるんだ…。ちょっとラッキーかも…♪)

新見が部屋に戻ったのを確認して私は横になった。

< 89 / 111 >

この作品をシェア

pagetop