幕末桜
「…蝶、蝶…」

誰…?

誰なの…?

私を呼ぶ、この声は…

「…蝶」

優しくて、透き通る美しい声。

そして、どこか懐かしい。

「蝶、私よ…。桜よ…」

桜姫、様…

此処はいったい何処なの…?

「此処は私と貴方だけの特別な空間よ」

特別な空間…

「蝶、良く頑張ったわね…。もう大丈夫よ。貴方の傷は癒しておいたわ…」

ふと肩に触れるとチクリとは痛んだか後の痛みは感じられない。

(これが、桜姫様のお力…)

「桜姫様、ありがとう…」

「ふふ、蝶。また力を貸して欲しい時は私を呼んで?私は貴方の心にいるから…」

「私の心…?」

「そうよ。さぁ、蝶行きなさい。貴方が愛している人達が心配しているわよ?」

私の愛している人達…。

新撰組の皆…

「ありがとう、桜姫様…。私、行くね…」

「えぇ。蝶、息災でね…」

すると私はまた意識を手放した。

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