《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~
堕ちた月は動きを止めた。


私は彼の次の行動に鼓動を高鳴らせて待った。



「どうしたの?透真さん」


「・・・ここまで来て…急に頭の中に妻の顔が浮かんだ…本当に俺は浮気が出来ない男らしい」


「…」


私たちは何もせず、布団に入った。


「初めて付き合った子とラブホに入ったまではよかったけど。キス以上のコトは出来ず、一晩、二人でこうして一つのベットで眠ったコトがあった」



「大切に思っていたんですね」


「単に、勇気がなかっただけだ。ホテルまで連れ込んだ俺が言うコトではないが、君も少し自分の行動に気をつけた方がいい」



「そうですね…でも、私も跡目の花嫁の立場から逃げたかったんです」


「互いに背負うモノが大きいのかもしれないな」



「…」


「今は互いにすべてを忘れて休息しよう・・・」


私たちは何もせず、瞳を閉じた。
高鳴る鼓動を抑えて、刹那の休息に身体を任せた。





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