自分の中で
篠原をよく知る岩本の親父が一つの提案をした。
「篠原さん。木工の素晴らしさを世の中に知らせるのも、あなたの役目じゃないか。ここは一つ区役所の教室で教えてくれないだろうか。」
岩本は篠原に働きかけた。
篠原は悩んだ。素人に教えることなんて、できるのだろうか。
しかし魅力的な提案でもあった。面接に来る人間はろくでもない奴ばかりだったからだ。
篠原には、このまま終わらせることに未練がないと言えば嘘になる。 でも妥協はしたくなかった。
篠原は、岩本の働きかけを受けた。
教室には、沢山の応募があり、選考に頭を悩ませた。
仕事を持っている社会人が中心であった。
だから教室は週末に行われた。篠原にとっては、決して納得できる内容ではないが、これが現実だと思った。
義男はそんなバックグランドなど知りもしなかった。
まあそんなややこしい現実を知っていたら、面接には来なかっただろう。
篠原は義男を見つめていた。
義男はなぜかわからないが、ここが自分の居場所になることが感じられた。
「いつから来れる。」
篠原はぶっきらぼうに言った。
義男は始めて口を開いた。
「明日から。」
篠原は頷いた。

第一章終わり。
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