曖昧ショコラ【短】
「ご馳走様でした」


今日も手を合わせて食事を終えたあたしを余所に、篠原は無言のままコーヒーを待っている。


雰囲気だけでそれを感じ取れるようになったあたしは、さながら彼専属のメイドのようだ。


もっとも、どんなに給料が良くても丁重にお断りしたい職種だけど…。


「先生、コーヒーです」


「あぁ」


カップに口を付けた篠原の横顔は相変わらず端正で、気を抜けば息を呑みそうになる。


彼はずるいのだ。


暴君そのもので、腹立たしい言動の数々に殴ってやりたくなる事もあるのに、その綺麗な瞳で見つめられると調子を狂わされてしまう。


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