曖昧ショコラ【短】
「そんな物欲しげな顔してんじゃねぇよ」


「なっ……!」


不意にあたしの方を見た篠原が、悪戯に瞳を緩めた。


「してませんっ……!」


慌てて反論をするものの、彼はあたしを見つめたまま喉の奥でクッと笑う。


対面式のキッチンが恨めしい。


「来いよ」


「嫌ですっ!!」


「何で?」


「なっ、何でって……」


言葉に詰まるあたしに、篠原が意味深な視線を寄越して来る。


「……っ、何考えてるんですか!」


心臓がドクドクと血液を運ぶのを感じて咄嗟にそう叫べば、彼はフッと小さな笑みを零した。


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