曖昧ショコラ【短】
「自惚れてるんじゃねぇよ。それだけの関係なら、お前みたいな女は選ばねぇよ」


『面倒臭ぇ』とその言葉通りの表情で付け足した篠原は、どこか諦めにも似た表情で続けた。


「イイか?一回しか言わねぇから、よく聞いとけよ」


次の言葉が落とされたのは、不機嫌な顔をした彼の唇があたしの耳元に寄せられた直後だった。


「……好きだ」


吐息が触れた事にピクンと反応した体よりも、その単語の意味に硬直する。


「だ、誰が……」


「俺が」


「誰、を……?」


マヌケな質問を返したあたしに、篠原はここ最近で一番大きなため息をついた。


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