君が好きとか、ぜったいないからっ!
もう限界。


そう思ったら力が抜けて、へなへなとその場にしゃがみこんじゃった。

い…今のなに?

ふわっと、風にのって、またさっきの甘い匂いがした。

気がつくと目の前に白糸くんがいた。

「ごめん。びっくりさせたね。」

申しわけなさそうにいう白糸くん。

まぁ、本人も反省しているわけだし…




…って


「もーー!!!びっくりしたじゃん!!!
からかうのもいい加減しにてよね!
こういうことほかの子にもしてるの?!だめだよ!!本気でびっくりしたんだからさ!」  

そんな簡単には許せません。

「ご…ごめんって…」

そう言いながら白糸くんは顔の前で手を合わせる。

その顔が何とも情けなくって。

「ぶっ。」

思わずふいちゃった。

「え?ここ、笑うタイミング?」

また、間抜け面をする白糸くん。

イケメンだけど、イケメンだけどなんかっ…。

「んーん。なんでもなーい。」

ひとりで笑い続ける私を不思議に思ったっぽいけど、そんなのどうでもいい。

「よしっ。アイスおごってくれたら許す。今からコンビニよってく?それか、明日の朝ちょーだい。朝一で食べる」

私のご機嫌はすっかりよくなっちゃった。

「仰せの通りに、碧さま。」

そう言って、白糸くんは手を胸に当てながら執事のお辞儀のまねをする。

「そうね、白糸。わたくしは、カリカリ君が食べたくってよ。」
 
執事のまねされたら、お嬢様のまねで返さないとね。

二人でそんなことをやってるのがばからしくなって、大きな声でわらっちゃった。


「次の…。」
 
急に話したから白糸君の声が聞き取れなかった。

「ん?なに?白糸くん?」

「次の土曜日空いてる?」

「うん。予定なしだよー。」

「じゃあ、美味しいお店につれてく。俺とデートしない?アイスはそのときおごるね。」

じゃ、また明日。

そう言って白糸くんは帰ろうとした…けど戻ってきて耳打ち。
 
私は頭が追いつかなくってこくこくとうなずいちゃった。 



『“白糸くん”じゃなくて、“翔”でしょ?』 


まだ、しら…翔の声が耳の中で響いてる。

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