狼さまと少女
寝所に連れられ、敷かれている布団の上へとそっと下ろされた。
仰向けの体勢で千歳様を見上げる。
金色の目と視線が合うと、千歳様の表情が柔らかく緩む。
千歳様は上半身を屈め、整った唇を私のそれへと軽く当てた。
初めての事に頬はより赤く染まる。
「緊張しているのか…?」
「……はい、っ」
もう一度唇が重なる。
触れるだけの口付けが止み、千歳様を見る。千歳様は目を細める。
「今はまだ止そう」
「…千歳様?」
「お前が、良いと思うまで…」
そう言った切り、千歳様は口を閉じた。
横になってから私の前髪をそっと撫でる。
私は千歳様の言葉の意味が分からないでいた。
ここに来ることになり、覚悟は決めていたと言うのに。
もしかして心にある戸惑いを感じられたからなのだろうか。
私は微かに不安に思いながら、金色の目を最後に一目見て、前髪に感じる優しい手に誘われるように眠りに落ちた。