別の手を選んでも(短編)
 新しい中学校。

 新しいクラス。四月とはいえ、三年の転入生は私だけだった。



 まだ身体になじまないおろしたての制服。

 緊張のせいか、動きまでぎこちなくなってしまう気がする。

 担任の北山先生の後ろから教室に入っていきながら、自分の手足がちゃんと動いているのか自信がなかった。

 転校なんて生まれて初めてで、いつも受け入れる側だったから、それがこんなにも緊張して、怖いように思えるものだなんて思いもしなかった。

 ちゃんと、受け入れてもらえるか、不安だった。

 新しい友達・・・ちゃんと、できるかな?


 
 ざわめいていた教室中が急に静かになる。

 視線をいっぱい、感じる。

 教卓の横、うつむき加減に、立ってしまう。

 顔をあげたほうがいいのかもしれない。でも、どんな顔をすればいいか、わからない。



「はい、座りなさい。今日は三年の新しいクラスの始まりだ。一年間よろしくな。

 それから転校生もこのクラスにはいるぞ。

 仲良くしてやってくれ。

 えっと、山本、挨拶してくれ」

「は、はい」



 うわずって、震える声。

 くすっと笑う声が聞こえた気がする。



 気にしちゃ駄目、自分に言い聞かせた。

 
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