別の手を選んでも(短編)
 精一杯顔をあげて、少し大きめの声で挨拶をする。



「山本芽生です。親の仕事の都合でK県から転校してきました。

 よろしくお願いします」



 いいながら、頭を下げた。

 ぱちぱちと、熱烈ではないとはいえ、拍手があがった。

 私はほっと息を吐いた。



「席はとりあえず、皆、出席番号順になってるから、山本は窓際のあそこだ」



 担任の指さすほうをみた。

 机の上を、春の暖かな風に吹かれたカーテンがふわふわと揺れていた。

 席に向かう。

 視線を感じて、緊張する。

 席について、ようやく、自分の場所についたようで、安堵の息をはいた。



 とりあえず、挨拶は終了。

 友達できるかな・・・それが、一番の不安だった。



 でも、クラス替えの後、新しく友達ができるかと考えているのは、私だけじゃなかった。

 皆、新しいクラスになじもうと忙しくて、転入生の私は浮いてしまったようだ。
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