ふーりっしゅ!

「さっきまですごい怒鳴りあってたんだけど」


先輩の低い綺麗な声に、ぎぎぎ、と首を動かして窓から目を逸らす。


「痴話喧嘩だったみたいだな」
「だったみたいだな、じゃないですーっ! なんてモノ見せるんですか! しかもあれ絶対クラスの遠野さんなんですけど……明日から気まずくなっちゃったじゃないですかッ」
「そう?」


しれっとした先輩。

もう、何考えてるのか……

思わず溜息をついた。

もう何も言うまい。あたしは取り敢えずもう一度テーブルに座り直す。

目の前には終わってない宿題があるんだけど……

あんなの見ちゃったらもうやる気になんてならない。

ドラマとか映画のは平気なのに、知り合いってだけですっごく恥ずかしい。

顔が一気に火照った気がして意味もなくシャーペンをくるくる回す。


「真白、顔真っ赤」


まっか?

一瞬、思考停止。


「う、右京先輩の所為ですってば」
「俺は知らねー」
「む」


シャーペンを置いて、先輩に抗議しようと未だに窓の向こうを見てる彼に向き直って。

右京先輩を視界に捉えた瞬間



呼吸が、

できなくなった。
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