お姫様に花束を
「こんなところで何をしてるのか知らないけど、ここにいるのには何かしら理由があるんでしょ?」
「それは……」
「あぁ、あたしとしたことが……。
ついいつもの調子で喋っちゃったよ……」
「あ……いえ!
どうかそのままで」
「いや……でも相手は王女様だからね……」
「いいんです。
今は……普通の女の子ってことで」
私がそう言うと、パン屋の女性は優しく微笑んだ。
「そう……そういうことなら。
あぁ、そうだ。
その帽子、あげるよ。
よく似合ってるからね」
え……。
優しく微笑む女性……。
何で……どうして……
「どうして……初対面の私にここまで良くしてくださるんですか?」
パンをくれたり、帽子も……。
「どうしてって……。
人に優しくすることに理由なんているの?」
「え…………」
「困ってる時はお互い様だよ。
相手がどんなに悪人でもどんな高貴な方でも、困っていたら助けてあげたいと思うでしょ」
女性はそう言ってカラカラと陽気に笑った。
……人が困っていたら……助けたいと思う。
例えそこに自分に利益がなくとも……もしかしたら損なこともあるかもしれないけど……
人が困っていたら手を差し伸べたいと自然に思う……それが優しさ……。
「……ですね。
確かに……その通りです」
「でしょ?」
「あの……。
パン屋さん……お名前は?」
「あたし?
モニークだよ」
「モニークさん……。
パンと帽子、ありがとうございました」
私がそう言うと、モニークさんはにっこりと笑った。