ぬくもりをもう一度
どうにか、

ごまかすことは出来たようだ。


香澄に気付かれないように

小さく息を吐く。


さっきのキスは、

俺の心の奥底に眠らせておこう。


「もうそろそろ、帰ろうか」


時計を見ながら、俺が言う。


もうすぐ8時になろうか

という頃だった。


さすがにこれ以上、

ここに長居するわけにも

いかないだろう。


「うん、そうだね」


香澄がにっこりと笑ってそう言うと、

俺たちは手を繋いで部屋を後にした。


もう、香澄とは

逢わない方がいいのかもしれない、

そう思いながら。





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