ぬくもりをもう一度
「阿久津くん、どうかした?」

ふいに声をかけられ、

我にかえる。


隣から俺を覗き込むようにして、

野々原が目をくりくりと

させている。


無音の空間でいきなり

声をかけられるのは、

心臓によくない。


それ以上に、

すっかり油断していた自分が情けない。


すうっと静かに息を吐いてから、

視線をパソコン画面へ向けながら

静かにこたえる。


「いや、なんでもないよ」




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