冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
――え?
ぬくもりも、
何も感じない、
無機質な黒い布。
血に染まった黒いジャケットだけが、
その場に落ちていた。
あぁ……
見覚えがあると思ったのは間違いで、
誰か知らない人のかもしれない。
そう、
思いたかった。
でも、
抱きしめたその黒いジャケットから、
微かに
甘い煙草の香りが、した。
それは、
馴染みのある香り。
私の知っている
甘い煙草の香り。