赤い月 肆

携帯を無造作にポケットに突っ込んで。
勢いよくバイクに跨がって。
メットを手にして夜空を見上げる。

視線の先には、今度こそ本物の月。

同じ月を、うさぎも見ているだろうか。

考えて、考えて、考えすぎて、グシャグシャになって、大切なコトを見失ってた。

うさぎが好き。

うさぎが俺を好きじゃなくても。
うさぎが俺から離れていっても。

うさぎが好き。

もううさぎしか見えない。

そもそも始めから、俺なんかの手に負える人じゃねぇンだよ。

今更、出て行かないようにチマチマ策を講じよーが、駆け引きしよーが、うさぎにゃ通じねぇよ。

形振り構わずブツかろう。

もしまた、そのー…噛んだりしちゃっても、イヤならサクっと殺してくれンだろ。

好きなンだもん。
失いたくねーンだもん。

ヤバい男に惚れられたと思って、諦めてもらおう。

< 56 / 265 >

この作品をシェア

pagetop