赤い月 肆
目を丸くしてポカンと口を開けた黒曜が、急にハンドルに伏せるようにして笑い始めた。
それも、爆笑レベル…
「ちょ… 危なっ
アンタ、前、前。」
「バっカ、笑わせンなよ。
違ェよ。」
笑わせてねーよ。
大真面目だよ。
なんたって、臨戦態勢デスカラネ?!
ナニがツボったのかわからないが、涙が出るほど笑った黒曜が目元を拭いながら言った。
「俺が、鬼だからだよ。
知ってンだろ?」
「‥‥‥‥‥
だから、ナニ?」
(コイツは鬼。
うさぎも鬼。
俺は…人。
だから、ナニ?
そんなモン、覚悟の上でココにいンだよ。)
さっきのように睨みつけるでもなく、だが瞳に力を込めて。
景時は雄々しく美しい鬼神を見据えた。