赤い月 肆
赤い髪を掻き上げて顎を反らす景時を、黒曜は真顔で見つめた。
そしてゆっくり口を開く。
「本当に面白いな、おまえ。
…いや、高杉景時。
俺のことは黒曜と呼べ。」
「へ?」
「また会おう。」
唖然とする景時を残して、車は走り去る。
そのテールランプを、景時はぼんやりと見送った。
(ナニ? このキモチ。
カノジョのお父さんに認められた、みたいな?)
『オトーサンと呼べ』みたいな?
『父であり、兄であり、恋人であった男』と、うさぎは言った。
黒曜にとっても、そんな側面があるのかもしれない。
娘であり、妹であり、『俺の女』…
この最後が、問題デスケドネ?
(やっぱ、気に入らねっ!)
景時はグランドの砂を軽く蹴ってから、バイクを停めてある従業員用駐輪場に走り出した。