玄太、故郷へ帰る



華奢な玄太の手の平には、そこにすっぽりと納まる様なブリキ製の箱。
それを、玄太の細い指が丁寧に掴んで、キイと微かな音を立てた。

開かれる箱。

私はそれを、ほんの少しだけワクワクしながら覗き込んだ。

それなのに、開かれた箱の中身は、空っぽ。
何も入ってなどいない。


「なんだあ、何も入ってない」


私が呆れた様にそう言うと、玄太はニヤリと笑って言った。


「入ってるってば」


「え――」


私はもう一度それを覗いてみる。

やっぱり、どこをどう見ても、見えるのはつるんとした箱の底だけ。


「……入ってないし」


「僕に必要なものが、ちゃんと入ってる」


「入ってない! か、ら!」


「入ってるって!」


言い張る玄太。
性格が頑固なのだから、後に退けなくなったのだろう。
残念ながら、私も同じ血を引く姉。
頑固さではいい勝負なのだ。


「入ってるって? いったい何がよ?」


私は、ほんの少しだけ悪意を込めて言う。



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