碧い月夜の夢
 あれからアパートに帰り、取り敢えず起きていられるだけ起きて、なるべく眠らないでいようとしていたのに。

 やっぱり、我慢出来なくてつい横になってしまったのが悪かったのか。



「逃げないで、真っ直ぐに現実に向かい合う…か」



 今日の夕方、あの喫茶店の眼鏡の店員が言った魔法の言葉。

 今この状態は、凛々子にとっては現実ではない。

 レオンの説明によると、凛々子の夢が作り出した場所ではあるが、ここは“テルラ”だ。

 だが、今いるこの“テルラ”ではない凛々子の本当の現実世界にも、あの眼鏡の店員が言った言葉は当てはまる。

 ――…自分は、逃げている。

 だから、あんなことを言われたんだ。

 ぎゅっと、右手で左腕を握り締めて。

 凛々子は真っ直ぐに、繁華街の中心部を見つめた。

 黒い影は、昨日レオンが教えてくれたみたいに、今日はちゃんと人間の姿をしている。

 まるでSF映画の中に出てくる大群の兵士のような近未来的な鎧を身に纏った人間が、一子乱れぬ行進をしながら、こっちに迫ってくる。

 昨日とはまた少し違う出で立ちだったが。

 こんなにはっきりと、あの集団を認識出来ると言うことは。



「ちょっとは…あたしもこの世界で進歩してるって事、かな?」



 レオンが言っていたように。

 凛々子はそう呟いてみる。

 ーー…あまり、嬉しくなかったが。

 あの“アルマ”という黒い集団に対する恐怖心は、昨日…いや、最初から全然変わらない。

 気が付くと、アルマの集団は四方八方からこっちに向かって近付いていた。

 一糸乱れず、規則正しく。

 ザッザッザッ、という足音までリアルに聞こえてくる。

 そんな足音が、繁華街の中心部、今いる川沿いの遊歩道の左右から挟み込むように真っ直ぐにこっちに近付いて来ていて。

 ヤバい、と凛々子は思った。

 このままじゃ、囲まれる。

 1度辺りをぐるりと見回して、凛々子は走り出す。

 この繁華街の道は、大体記憶している。

 遊歩道を川沿いに少し走れば橋があるから、何とかそこまで行けば挟み込まれずに済む。

 ――…しかし、それにしても。
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