碧い月夜の夢
「何処にいるのよ…っ!!」



 走り出しながら、凛々子はレオンの姿を探す。

 昨日あれだけ自信たっぷりに、俺を信じろとか言ってた癖に。

 アルマの集団は、凛々子が走る方向に進路を変えた。



『逃げないで、現実とちゃんと向かいあって』



 そうは言うものの、こんなにあからさまに命を狙われている状況で、逃げるなという方が無理だ。

 橋を渡りきった所で、ふと、凛々子の耳に初めて行進の足音とは違う音が聞こえてきた。

 少し立ち止まり、耳を済ます。



「……泣き声…?」



 微かに、子供の泣き声が聞こえた。

 何処だろう。

 あの泣き声は、何処から聞こえて来るんだろう。

 海から吹くそよ風に乗って。

 振り向いた先は、橋を越えた場所に設置された、公園だった。

 その公園の向こうからも、アルマの集団が行進しているのが見えた。

 凛々子はまた、急いで走り出す。

 アルマと凛々子を結んだ線の真ん中に、あの公園があるのだ。

 このままじゃ、あの泣いている子供はアルマに捕まってしまう。

 今までのこの怖い夢シリーズの中で、凛々子以外の人間が出て来たのは、レオンが初めてだった。

 だが、ここはテルラで、初めて夢に出て来たレオンは、テルラの人間で。

 そう考えたら、今泣いているあの子供も、凛々子が作り出した夢の産物ではなくて、テルラの人間だと考えるのが自然なような気がする。

 レオンがいないから、確認しようがないが。

 何とかアルマより早く子供を見付けるか、凛々子がうまく逃げてあの集団を公園に寄り付かせないようにするか。

 全速力で走りながら、凛々子は考える。

 こっちが走る速さと、アルマの集団の距離とを考えたら、どうやら直接あの公園に行った方が早そうだ。

 ……そう言えば、繁華街の近くに公園なんてあったっけ?

 そんな考えが凛々子の頭の中を過ったが、やっと公園に辿り着いた時、思わず立ち止まった。



「……ここは…」



 見覚えがある。

 いや、忘れようとしても忘れられない。

 ここは“あの”公園だ。

 凛々子は全身に、鳥肌が立つのが分かった。

 身体が震え、立っているのもやっとだ。

 だが、子供の泣き声はさっきよりも更に近くなっていた。

 凛々子は目をきつく閉じてその場にうずくまり、耳を塞いだ。



『逃げてばかりじゃ、何も始まらない』



 そんな言葉が、頭をよぎる。

 アルマの集団は、すぐ近くに迫っている。
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