碧い月夜の夢
「一人で何でも抱え込んだらダメだよ、凛々子。あたしはあんたの味方だからね、何があっても」
「……分かってる」
凛々子は少しだけ、笑顔を浮かべた。
自分はこんな時でも素直に“ありがとう”すら言えないのか。
自分はいつから、こんな風になってしまったんだろう。
そんな自分に微かに苛立ちを感じながら、凛々子は無意識に長袖シャツの左腕を撫でた。
☆ ☆ ☆
それからサヤカと夕方まで他愛のない話をして、凛々子は帰宅した。
アパートは7畳半のワンルームで、ロフトが付いている。
多少狭いが、独りで暮らすにはちょうど良かった。
新築でもないので、何よりも、家賃が安いのが魅力だった。
本当はゆっくりと湯船に浸かって日頃の疲れを癒したい気持ちもあるのだが、独り暮らしを始めてからどうもシャワーで済ます事が多くなっている。
今日もどうしょうか少し悩み、やっぱりシャワーで済ます事にした。
湯船にゆっくり浸かるよりも、一刻も早く横になって、肉体的なこの疲れを取りたい。
だから取り敢えずシャワーを浴びて、ふうっとため息をつきながら、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに氷を入れ、ローソファーに座る。
テレビをつけようとして、凛々子はふと考えた。
今日も、またこうやって何気なくテレビを見ていると、いつの間にか眠くなるんだろう。
話し相手もいないし。
朝から夜中まで働いて、疲れが酷い時には、ロフトに敷いてある布団にまで辿り着く体力もなく、このままローソファーで寝る時だってある。
だが、勝手気ままな独り暮らし、そんな事はどうでも良かった。
――…問題は、夢。
このアパートに引っ越した1ヶ月前から、毎日同じ夢を見る。
思えば、頭痛もその頃から始まったような気がする。
夢の中の場所はいつも、この街に似た場所だった。
この街だという確信はないが、細かいところは覚えていない。
だが、夢の中で凛々子は、いつも決まって逃げている。
全力で走って、追いかけて来る“何か”から。
「……はぁっ、はぁ…っ!!」
走りながら、後ろを振り返る。
明らかに殺気を放った黒い影の集団が追いかけて来る。
「……分かってる」
凛々子は少しだけ、笑顔を浮かべた。
自分はこんな時でも素直に“ありがとう”すら言えないのか。
自分はいつから、こんな風になってしまったんだろう。
そんな自分に微かに苛立ちを感じながら、凛々子は無意識に長袖シャツの左腕を撫でた。
☆ ☆ ☆
それからサヤカと夕方まで他愛のない話をして、凛々子は帰宅した。
アパートは7畳半のワンルームで、ロフトが付いている。
多少狭いが、独りで暮らすにはちょうど良かった。
新築でもないので、何よりも、家賃が安いのが魅力だった。
本当はゆっくりと湯船に浸かって日頃の疲れを癒したい気持ちもあるのだが、独り暮らしを始めてからどうもシャワーで済ます事が多くなっている。
今日もどうしょうか少し悩み、やっぱりシャワーで済ます事にした。
湯船にゆっくり浸かるよりも、一刻も早く横になって、肉体的なこの疲れを取りたい。
だから取り敢えずシャワーを浴びて、ふうっとため息をつきながら、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに氷を入れ、ローソファーに座る。
テレビをつけようとして、凛々子はふと考えた。
今日も、またこうやって何気なくテレビを見ていると、いつの間にか眠くなるんだろう。
話し相手もいないし。
朝から夜中まで働いて、疲れが酷い時には、ロフトに敷いてある布団にまで辿り着く体力もなく、このままローソファーで寝る時だってある。
だが、勝手気ままな独り暮らし、そんな事はどうでも良かった。
――…問題は、夢。
このアパートに引っ越した1ヶ月前から、毎日同じ夢を見る。
思えば、頭痛もその頃から始まったような気がする。
夢の中の場所はいつも、この街に似た場所だった。
この街だという確信はないが、細かいところは覚えていない。
だが、夢の中で凛々子は、いつも決まって逃げている。
全力で走って、追いかけて来る“何か”から。
「……はぁっ、はぁ…っ!!」
走りながら、後ろを振り返る。
明らかに殺気を放った黒い影の集団が追いかけて来る。