聖†少女
「……ねぇ、何か違くない?」
少女は不機嫌な声そのままに、私に尋ねる。
「ん、そうか?」
特に疑問のない私は、左手に握った少女の手を強く引き、アーケード街を歩く。
「…うん」
手を引かれ躓きそうになった少女を抱き止める。
「『恋人』と言ったら、『普通』はこうするものだろう?」
恋人、という単語を実際に口にする日がくるとは、思ってもみなかった。
「お願いって、何よ」
数分前、少女にした『お願い』は
『私の、『恋人』になって欲しい』
だった。
「はぁ?!」
意味がわからない!、少女は激昂すると、大体っ、とあとを続けた。
「『恋人』って、普通異性だと思うっ!!」
「おや、でも私達は『普通』ではないぞ?」
うぐっ…、少女は言葉に詰まると顔を背け
「…それに、好きじゃない者同士で付き合っても意味ないと思う」
それも一理あるな、即答した私に彼女はまたも激昂し
「だったらっ…」
「でも、『だからこそ』という言葉がある」
……は?、少女は目を丸くし、だからこそ?、と私の言葉を真似る。
「あぁ、『好きじゃない者同士だからこそ』付き合う価値はあるんじゃないか?」
そんな問答の果てに、私達は今イルミネーションの眩しいアーケード街を歩いている。
「…ねぇ、あんたって、……あたしもだけど、そーとー変よ?」
手を引かれ、半ば呆れ気味に少女は言う。
「貴女もなら、お互い様じゃないか」
風船を手渡す白いおひげのお爺さんから風船を貰い、少女に渡す。
「それに、どんなに変でも私は貴女が好きだ」
真っ直ぐ少女の瞳を見詰め言うと、少女の頬はみるみる赤く染まり、終いには、熟れた林檎のように真っ赤になった。
「あ、あたしもよばかっ!……だから、…大事にしなさいよね…」
これから先、私達の前には様々な壁が立ち憚ることだろう。
だけど、私は彼女を一生大切にすると誓おう。
…今宵は、聖なるクリスマス。
†MerryChristmas†
