わたしの前から突然、消えたモノ…
朝がきた。

いつものように起きて、
顔を洗って歯磨きして、
制服に着替えて家を出た。

通勤、通学の人間がせわしなく歩く。

やっぱり昨日と同じで、どれも顔なし。

顔がないせいか、足の動きだけ
やたら目に付く。

こうしてみると歩き方もいろいろあるんだなぁ。

バス停について、順番にならぶ。
前にはロボットの整列が数名。

待っていると急に、
後ろからおはよーっ、

女性の声がした。

振り向くと同じ制服。

ねえ、昨日のデートどんな感じだった? 聞かせてよー。

んっと、この声は…

りょうこ、だな。

うん、楽しかったよー。

首の上あたりを見ながら笑顔を作る。

いいなぁ、うらやましいなぁ。

いいか?

この状態を教えてやろうか、と
とっさに思ったけど、ここは冷静に…

ニコリ。

バスの後部席に座る。
見通しは最高。

立ってる人がいても
ちょうどいい高さで、
スルーして見えてしまう。

顔が見えないときって人間
相手のどこを見たらいいんだろね。

んー、男なら胸かお尻なんだろうか?

女なら…やっぱ顔以外興味なし。

いくら脚が長くても、
いくらがっしりした体型でも、

結局、顔の付属品。

あー、これから何を求め生きていこう?
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