わたしの前から突然、消えたモノ…
ほんとに…

こいつが学校一の男だったのか。
暗闇で見たら単なるうっとしいやつ。

わたしは伏し目がちに、

あの、ごめんなさい。
今日はこれから習い事があるんです。

へぇ、習い事してるんだ?
ピアノとか……いや華道とかかな?

おいおい、

そんなお嬢様じゃありませーーん。

ほんと、見た目だけで判断するやつ。

あ、でもその点はわたしも同類だっけ。

いえ、小さい頃から空手してるんです。 今じゃ、黒帯なんですよ。

さあ、どんな顔に変わったのかな。

ちょっと見てみたかった。

でも、声でわかったけどね。
明らかに慌ててる。

えっ、そ、そうなんだ。
清楚な感じなのに、意外だね…

でも、そのギャップに逆に惹かれるよ。

なるほど…

あの顔でそうつけ加えられたら
さらに高感度アップだわ。

さすが、だてに校内一じゃないね。

でも、今のわたしには通じないのよ、

残念。

わたしは、カレにゆるーく手を振って、

薄暗くなってきた街中を家に向かった。
< 15 / 37 >

この作品をシェア

pagetop