わたしの前から突然、消えたモノ…
だって…

あなたは彼女にもう会えるわけないの。

その事実を本人に気づかせたら、だめ。

そんなこと知ったら、悲しすぎるよ。
なんとかしないと…

わたしは玄関を出て行こうとする
あなたの前に手を広げて立ちはだかる。

ねえ、まって!

その女性よりわたしのが絶対にいいって!

昨日のように、また無言。

お願いだから、いかないで。

もう少し一緒にいようよ。

わたし…

また前の顔のない生活に戻るんだよ。
あなたともっと話したい。
顔を見て、笑っていたいの。

男は首を少しだけ振って、

ごめん、もういかないと。

一生の、お願い…だから。

そう言って…

わたしはあの人の体に寄りかかった。
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