ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)
「そっかなァ、萌え要素あるのに」

「え~っ、あたしのどこに“萌え要素”があるの?」

「だって“メガネっ娘、萌え~っ”ってヒト、けっこーいるじゃん」

「それはアキバ限定のおハナシでしょっ」

「じゃ、アキバに向かってボーイハント、レッツ・ラ・ゴー♪」


さすがにアラサーなだけあって、彼女の言葉の端々には、死語の世界の言葉たちがオバケのようにときどき顔を出す。


「ヤだ。あたし、小太りでメガネかけてて、大っきい紙袋もってるアニヲタとなんか付き合いたくないよぅ」

「そぉ? デッカイ紙袋も今じゃ、立派な“エコバッグ”だと思うけどなァ」

「そーいう問題じゃないっしょっ」

「そっかぁ。まぁ、それはともかくとして、もしナンノちゃんにひとつだけモテない理由があるとしたら、ソレは“スキがない”からじゃないか、ってあたし思うなァ」

彼女はそう言うと、細いタバコの煙を“ふぅ~”とふかした。

「スキがない?」

そんなこと言われたのは、生まれてはじめてだ。

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