火ノ鳥山の渇人
「話がわからないんですけど。」

2人がこっちを見る。

「いや、この人に聞いたんだけど反応なくて…子供見ませんでした?男の子なんだけど…。」

火が回りでボウボウと燃えて、不気味な男が2人私のそばにいる。対面には全身火まみれの髭男。こんな状況で私ものん気なものだと少し呆れる。

「俺だ。」

不気味男Aがつまらない冗談を言うので頭にきた。

「いやいや、悪いんだけどもっと元気ハツラツな感じの子!」

不気味男Aはこっちも見ずにまた答える。

「ナナシは俺だ。」

こいつまだ言うか。

「だから!子供な…」

そう言いかけて止まる。ナナシの頬にあった、2本の傷がありありとこの男にある。どういう事?単なる偶然だよね。火の男がしゃべる。

「彼ですよ。ロズ・テック公。彼があなたの目を治し、一ヶ月半この山で共に暮らした少年。」

頭の整理が出来ない。

「申し訳ありませんが、あなた方の生活はずっと見させてもらいました。と言っても監視していたのは、そこの男です。
私だけではなく、他、同士11人で変わり代わり。
そこの男はとても危険な思考の持ち主なのでこの山に隔離してました。」

不気味男A、いやナナシがまたニタニタ笑って喋り出す。

「1人の人間を山に閉じ込めるような奴に思考うんぬん言われたかないねぇ。
おいロズ!」

ナナシがこっちを振り向く。そして親指で後ろにいる火の男を指しながら、強く言う。

「こいつだよ。記憶喪失の元凶。俺を幼少に戻して、脳に法力ぶっ込んで、思考を停止させ、雲をただ、だらだらと見るだけの廃人にしやがった奴は…へっへっへ。」

私の脳裏に出会った頃のナナシが浮かんできた。1人大きな葉に乗って雲を眺めている少年が。

「ロズ・テック公、彼は本当に危険なのです。現に今だって、あなた、いやあなたの町に危害を加えようと、禍々しい気配を放っていた。それに私の警戒網が反応して……」

「うるさい!そんな事より彼の、ナナシの言った事は本当なの?」

私は強い怒りで、火の男に問いただした。
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