火ノ鳥山の渇人

「しらを切るきか!この山賊が!」

私は杖を両手に持ち替えポカスカと叩いている。この山に入ってからしばらく、人の視線のようなものを感じていたのだ。昔から私には妙な感の冴えがあった。とある暖かい小春の日に、なぜか雪が降るような気がしていたら現実となったり、帰路の途中突然遠回りしたくなり、道草をくったら、いつもの帰路にヒトクイグマか出て鉢合わせにならずに済んだことや、まぁ他にもいくつかある。

その事から、この男の子が私に視線を送りつけ回していたんだ!という図式が出来上がった。

「頃合いを見て私を襲う気だったんでしょ?そうはいかない!」

私はまだまだ叩く。

「いてて、いや本当にやめてって……おい!」

男の子が手を空に向かって上げた、すると地面から蔓のようなものが出てきて、私の体に巻きつき上空へと持ち上げられた!

「うわ~凄ぇえ!!」

男の子がキラキラした目で驚いてる。私はギラギラした目で言う。

「こら~!何とかしろ!下ろせー!」

その男の子は振り上げた手を右へ左へと動かした。それと同時に私の体も左右に動く。今度は上下にと、自分の力を確かめるかのように動かす。もちろん私も動く、だんだん気持ち悪くなってきた。

「ねぇ叩いて悪かったわ、お願いだから下ろして。」

「え、わっごめん夢中になっちゃって。」

そう言うと私を縛ってた蔓も緩まり、ゆっくりと地面に足がついた。

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