火ノ鳥山の渇人
「あなた何なの?この山で何してんのよ?」

「ん~よくわからないんだよね。ただこの崖からぼんやり下を眺めてただけで、どういう理由でそんな事してたかもわからない。」

「は?何よそれ。名前は?」

「知らない」

嘘を付いてる感じでもない。よく見ればまだ子供だ。12から14位で私より2つ3つ年下だろう。髪色は黒で短いボサボサ頭。Tシャツ、半ズボンで裸足。見た目は活発そうな子供だ。左頬に切り傷のような線が2本入っている。山賊らしいのはその傷位のもので、後は普通の少年。こんな子を山賊だと思うなんて、私も相当慌ててたもんだ。最悪!あ~恥ずかしい!

「じゃ記憶喪失ってやつね!」

恥ずかしさがイライラに変わり、少し語気が強くなった。でも男の子の状況を考え改めて、優しい声で話た。

「でも落ち込んじゃダメよ。何か1つのきっかけで全て思い出したりするかも!焦らないで、気持ちにゆとりを…」

記憶喪失の男の子はまた地面から新芽を出しその葉に乗りクルクルと回り遊んでいる。

「こらーー!!」

持っている杖を男の子に向かって思いっきり投げてやった。キレイに顔面にヒットしそのまま地面に落っこちた。

「いてて…何すんだよもう。」

「あんたね~人がせっかく励ましてやってんのに何クルクル回って遊んでんのよ!記憶喪失なのよ!落ち込むでしょ普通!」
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